男性不妊


男性不妊とは

日本産科婦人科学会では、定期的に夫婦生活があって避妊をしていないのに、2年以上妊娠
しない状態を「不妊症」としています。不妊症はとかく女性側の問題として捉えられがちですが、
実際に妊娠するのは女性であっても、妊娠という出来事は女性の卵子と男性の精子が結びつ
いて、初めて成立するものです。不妊の原因は男性にも女性にもほぼ同じ確率であります。 

近年、食生活や生活環境の変化から成人男性の精子数が減少しているという研究結果が報
告されており、WHO(世界保健機関)の発表によれば、精子の運動率も20年前と比べて
80%から50%にまで低下しています。まり、元気な精子をつくれない男性が確実に増えて
いるのです。男性不妊は決して特別な出来事ではありません。極めてデリケートな問題である
がゆえ周りに話さない人が多いだけで、実は、ご夫婦一緒に頑張って取り組んでいるという方
もたくさんいらっしゃいます。 

男性不妊の割合
今、不妊に悩むご夫婦が10組に1組ほどいると言われます。そのうち、女性に原因があるケー
スが45%、男性に原因があるケースが40%、原因不明のケースが15%と報告されています。
男性不妊の割合は年々増加傾向にあり、一説には、環境ホルモンや活性酸素が増加に拍車
をかけているのではないかと指摘されています。

男性不妊の主な原因

男性不妊にも様々な原因があります。最近、テレビCMなどで話題が提供されている「ED」も男
性不妊のひとつですが、圧倒的に多いのは、精子をつくる機能に障害があり、精巣でうまく精
子がつくられない「造精機能障害」です。男性不妊の原因のうち約90%はこの「造精機能障害」
にあたります。


男性不妊の主な検査

男性不妊の検査は泌尿器科や産婦人科で受けることが出来ます。心理的なストレスやプライ
ドなどから検査に消極的な男性も多いようですが、女性の不妊検査に比べると、簡単で痛みを
伴うこともほとんどありません。また原因も、比較的単純で特定しやすいケースが多いと言わ
れます。

1日も早く不妊を解消し、元気な赤ちゃんを授かるためにも、ご夫婦一緒に検査を受けられるこ
とをお勧めします。

検査内容について
既往歴や性欲の有無、勃起の状態、性交回数などを確認する「問診」をはじめ、精索静脈瘤な
どの有無を調べる「男性性器の視診・触診」、精液検査をはじめとする「基本検査」がありま
す。もしも基本検査で問題があった場合は、原因を特定するために「精密検査」が行われま
す。

基本検査の種類
 精液検査 
マスターベーションで採取した精液から精子数や精子運動率をチェックする。 
 精子生存性検査 
精液中に動いていない精子が多い場合、その精子の生存を判別する。 
 精液培養検査 
精液検査で白血球が多くみられる場合、細菌の種類を調べる。 
 尿検査 
採尿し、尿糖や尿蛋白、赤血球、白血球の数を調べる。 
 尿中精子検査 
無精液症や精液減少症の場合に、射精後の尿を採取し、膀胱に精子が逆流していないか調
べる。 
 ホルモン検査 
採血して、血中の男性ホルモン値、卵胞刺激ホルモン値、黄体化ホルモン値、プロラクチン値
などを調べる。 
 抗精子抗体の検査 
精液の状態から、精子に対する抗体の有無を調べる。 
 フーナーテスト 
女性の排卵日に合わせて性交した後、女性の子宮頸管粘液を採取して、その中にいる精子
の状態を調べる。 
 陰嚢部超音波検査 
陰嚢部に超音波をあて、精巣容積や腫瘍の有無などを調べる。 
精密検査の種類
 精巣生検検査<無精子症や乏精子症の疑いがある場合> 
陰嚢を1cmほど切開して精巣の組織を採取し、造精機能を調べる。 
 精管精巣造影検査<精管通過障害の疑いがある場合> 
陰嚢の一部を切開し精管に造影剤を入れて、X線撮影し、精管の様子をチェックする。 
 染色体検査 
精液中から運動精子を数百匹ほど選び、1匹ずつ性染色体を調べる、もしくは、血液中のリン
パ球を培養して染色体を調べることによって、性染色体や常染色体の異常を調べる。 
 遺伝子検査<高度の乏精子症や非閉塞性の無精子症の場合> 
Y染色体の欠失、先天性精管欠損症による嚢胞性繊維症の責任遺伝子との関係を調べる。 
 精子尾部検査<生存しているが動かない精子が多い場合> 
電子顕微鏡で精子の尾部を観察し、異常の有無を調べる。 


男性不妊の主な治療法

炎症や感染症などが原因の場合は、薬剤治療によって自然妊娠が可能になるケースもありま
す。しかし、男性不妊の90%を占めている「造精機能障害」は、原因不明のものが大半であ
り、現在のところ、根治できる治療法や効果的な薬剤がありません。また、男性ホルモンの欠
乏が認められる場合はホルモン剤が投与されますが、長期の使用が、逆に、造精機能を悪化
させることがあるので、抵抗があるという人もたくさんいらっしゃいます。

そのため、男性不妊のほとんどが、体外受精や顕微授精といった高度な生殖補助医療の選
択を余儀なくされています。さらには、生殖補助医療を受ける際にも、数少ない精子の中から、
質のよい精子をなんとか選び出して、施術に挑んでいるという厳しい現状にあるのです。


造精機能障害による男性不妊の治療法
 精子減少症 
軽度の場合は薬が使われるが、その効果は不明である。経過や状態によって、人工授精・体
外受精・顕微授精となる。 
 乏精子症 
軽度の場合は薬が使われるが、その効果は不明である。経過や状態によって、人工授精・体
外受精・顕微授精となる。 
 精子無力症 
経過や状態によって、人工授精・体外受精・顕微授精となる。 
 精子奇形症 
正常な精子を選び、体外受精・顕微授精となる。 
 無精子症 
精巣や精巣上体に精子が見つかれば、顕微授精となる。 
副性器障害による男性不妊の治療法
原因の菌に応じた抗菌剤が投与される。

精路通過障害による男性不妊の治療法
 精索静脈瘤 
外科手術が行われる。基本的には、開腹または内視鏡下で精索静脈をしばる(結紮)方法で、
静脈の流れを改善することになる。 
 閉塞性無精子症 
軽度の場合は、精管をつなぐ手術が行われる。重度の場合は、精巣や精巣上体から精子を
採り顕微授精となる。 
 精巣上体炎 
炎症を抑える薬を投与される。しかし、炎症が治まっても精管が塞がっていたり、精子が死滅
したりしてしまう場合は、精巣や精巣上体から精子を採り、顕微授精となる。 
 膿精液症 
抗菌剤を使った薬物療法が行われる。 
性機能障害による男性不妊の治療法
 勃起障害(ED) 
内科的な疾患から起こっているものに対してはその疾患の治療が優先される。また、勃起に
必要なホルモン・神経などに異常がある場合は、バイアグラなどの薬が使われる。精神性のも
のに対しては、基本的に心理療法が行われる。 
 射精障害 
通常は、心理療法と薬物療法が行われる。「逆行性射精」の場合は、精子を採取して人工授
精、状態によっては体外受精・顕微授精となる。 

生殖補助医療とは
卵子や精子などを体外に取り出して、妊娠への行程を一部助ける医療の総称を生殖補助医
療(ART)と言います。

新生児の65人に1人が体外受
精児だと言われる今、生殖補助医療は一般的なも
のになりつつあります。しかし、非常に高度な技術を必要とする上、身体的・精神的負担も伴う
難易度の高い医療です。さらには、健康保険が適用されないため、経済的負担も伴います。
話題になっている輝かしい治療結果だけではなく、慎重に考えなければならない点もたくさんあ
るのです。

体外受精とは
夫の精子と、女性の卵巣から取り出した卵子を試験管の中で培養し、受精させた後、その受
精卵を子宮内部に戻す方法です。「体外受精胚移植」と呼びます。



 妊娠率・・・・・・・・・1回あたり約15〜20%

 出産率・・・・・・・・・1回あたり約10〜15%

 料 金・・・・・・・・・・約20〜45万円

 治療に必要な精子数・・・精液1mlあたり精子数500万匹以上


顕微授精とは
顕微鏡下で1匹の精子を卵子内に注入し受精させた後、その受精卵を子宮内部に戻す方法で
す。「イクシー法」と呼ばれます。

また、射精液中に精子が確認できない場合でも、精巣上体から精子を採取する「精巣上体精
子採取法(MESA・PESA)」、精巣内の精子を採取する「精巣内精子採取法(TESE)」により、顕
微授精が可能です。 



 妊娠率・・・・・・・・・1回あたり約20〜25%

 出産率・・・・・・・・・1回あたり約15〜20%

 料 金・・・・・・・・・・約25〜50万円

 治療に必要な精子数・・・1匹以上


人工授精について
人工授精は一般不妊治療に分類されます。採取した精液を、女性の子宮内に直接送り込む
方法です。配偶者間の人工授精を「AIH」、非配偶者間の人工授精を「AID」と呼んでいます。



 妊娠率・・・・・・・・・1回あたり約5〜15%

 料 金・・・・・・・・・・約5,000〜20,000円

 治療に必要な精子数・・・精液1mlあたり精子数1,000万匹以上



まずは日常生活で出来ること
から
不妊の原因があると診断された男性の中には、不妊治療への第一歩をなかなか踏み出せず
にいる方も少なくありません。その理由として、女性不妊に比べて認知度が低く、進んで治療を
受けにくい現状が挙げられます。また、男性は女性以上にナイーブだと言われることがありま
す。男性の中には、男性不妊であるという事実をうまく受け入れられないために、治療にも取り
組めないという方も多いものです。
不妊治療に抵抗がある男性や、パートナーの男性に不妊検査を勧めにくいという女性が、出
来るだけムリなく男性不妊という問題に取り組めるよう、日常生活において出来ること、気をつ
けたいことなどをまとめています。
ご自宅でできる男性不妊対策として、治療に抵抗がある方はもちろん、治療中の方にも参考
にして頂ければ幸いです。 

男性不妊と亜鉛不足
男性不妊とタバコ
男性不妊と飲酒
男性不妊とストレス
男性不妊と下着
男性不妊の自覚症状
男性不妊と漢方
男性不妊とサプリメント
NEW 男性不妊と高熱





近年の男性不妊の原因のひとつ「亜鉛不足」

男性不妊の増加を招いている原因のひとつとして、現代の食生活による栄養バランスの乱れ
が指摘されています。特に、インスタント食品の常食や化学肥料で育った野菜の摂取などか
ら、私たちは“慢性的なミネラル不足”と言われており、中でも、「亜鉛」の欠乏が男性不妊の原
因となることは、近年の重大な栄養問題として話題にのぼっています。 

亜鉛は、男性の体内で精子が生産される過程において必要不可欠な栄養素です。亜鉛が不
足すると、精子の数が減少する・精子の運動率が悪くなる・奇形の精子が増えるなど、さまざま
な不妊の原因を招くことが分かっています。また、性欲を低下させたり、性機能障害を招いたり
することもあると言われています。つまり、亜鉛は男性の性機能を支える重要な栄養素だと言
っても過言ではありません。 

ところが、この亜鉛は食品に含まれている割合が低い上に、調理されることによって大部分が
失われてしまいます。また、薬の中には亜鉛の吸収を阻害するものもあり、普通に食事をして
いるだけでは摂取しにくい栄養素と言えます。実際、ある統計では、日本の成人男子の1日あ
たりの亜鉛摂取量は、厚生労働省の推奨量の約60%という、非常に低い数値が報告されてい
るそうです。男性が活発な生殖機能を維持するためには、意識的に、亜鉛を摂取する必要が
あると言えるでしょう。

今は様々な食事情から、どんなに食事内容に気を配っている方でも栄養バランスが乱れがち
です。亜鉛不足も決して他人事ではありません。現代社会に暮らす限り、どなたにも起こり得る
ことです。もしかすると、不妊でお悩みのご夫婦の中には、亜鉛を意識することで、ラクに赤ち
ゃんを授かる方々もいらっしゃるかもしれません。 

亜鉛を含む食品(可食部100gあたり)
牡蠣・・・・・・・・・・・・・・40mg 
ビージジャーキー・・・・・・・・8.8mg 
ゴマ・・・・・・・・・・・・・・7.1mg 
するめ・・・・・・・・・・・・・5.4mg 
アーモンド・・・・・・・・・・・4.8mg 
ズワイガニ(缶)・・・・・・・・4.7mg 
たらこ・・・・・・・・・・・・・3.9mg 
納豆・・・・・・・・・・・・・・1.9mg 
精白米・・・・・・・・・・・・・1.5mg 
ブロッコリー(生)・・・・・・・1.1mg 

タバコと男性の生殖機能に関する研究データ

タバコはガンをはじめとする様々な病気の原因になるだけではなく、男性の生殖機能にも悪影
響を及ぼすと言われています。

 研究データ1 「男性の精子数が約15?24%も減少する」 
ノースカロライナ大学のMarilyn Vine教授によると、喫煙者の1ml当たりの精子数は非喫煙者よ
り15?24%少ないとする報告があります。 
 研究データ2 「精子の受精能力が低下する」 
アメリカ生殖医学会にて、喫煙男性の精子は正常な精子に比べて、卵子と結合する力が弱い
というデータが発表されています。試験対象となったのは1日4本以上のタバコを2年以上すって
いる男性で、全体の平均喫煙年数は約15年。試験の結果では、受精能力が正常な精子の約4
分の1しか確認できなかったそうです。 
研究データ3 「体外受精における妊娠率が低下する」 
カナダ・マクマスター大学の研究者が、医学誌「ヒューマン・リプロダクション」に発表した調査結
果によれば、体外受精で妊娠する確率は、夫婦のどちらかが喫煙している場合、夫婦2人が
非喫煙者の場合に比べて、約半分にまで下がってしまうとのことです。 
研究データ4 「精子のDNAを損傷する」 
スペインのバルセロナ大学の研究チームによれば、喫煙は運動能力の高い精子のDNAを損
傷することが明らかにされています。 
研究データ5 「ED(勃起不全)のリスクが40%高まる」 
オーストラリアのシドニーの研究チームが『Tobacco Control』という雑誌に掲載した調査研究
によれば、1日の喫煙本数が20本以上の男性は、非喫煙者に比べ、勃起不全(ED)を発症す
るリスクが40%(1.39倍)高いということです。 
世の中にはタバコを吸っていても赤ちゃんを授かったというご夫婦があり、一概に、タバコが不
妊の原因であるとは断定できません。ただ、数々のデータを見れば、タバコが男性の造精機能
を危機にさらす恐れがあることは間違いなさそうです。赤ちゃんが出来にくいと感じた時には、
まず、禁煙を考えてみるのもひとつの対策だと言えます。



飲み過ぎにより起こり得る造精機能トラブル

アルコールは適量であれば、ストレス発散や快眠などの良い効果が期待できると言われます。
しかし、過度の飲酒は、精子を形成する「造精機能」のトラブルを招く原因になるという見解が
あります。 

アルコールを分解する酵素は肝臓にあり、体内に入ったアルコールのほとんどが肝臓は代謝
されています。ただ、男性の場合は、精巣にもアルコールを分解する酵素があって、過度の飲
酒により、分解過程で発生するアセトアルデヒドという物質が精巣内に増加してしまうことがあ
ります。 

高知県の下司病院内にある「アルコール問題研究所」によれば、このアセトアルデヒドは非常
に毒性が高く、精巣内に蓄積すると、精子をつくる能力を奪ったり、男性ホルモンの合成を抑
制したりしてしまうことがあるそうです。

また、過度の飲酒による体の冷えが男性の生殖機能を低下させるという指摘もあります。これ
はアルコールが体を冷やすものであるという東洋医学の考えに基づいたもので、体温の低下
が体のあらゆる機能を低下させて、そこから生殖機能の低下につながると言われています。
本来、男性は女性に比べて体が冷えにくく、冷え性にもなりにくいとされています。しかし、近年
は食生活や生活習慣の影響から、冷え性や低体温の男性が増えているそうです。 

誤解のないように補足しますが、決して、飲酒=不妊ということではありません。ただ、度を超
えた飲酒を続けていると、精子の数・運動率の低下を招く恐れがあるということです。お酒は
“ほどほど”を守って、楽しく飲みましょう。 


 過度のストレスはEDや精子数減少につながる可能性が

男性の性機能をコントロールしている男性ホルモン「テストステロン」は、ストレスの影響によっ
て、その分泌量が低下してしまうことで知られます。テストステロン値が低下すると、精力減退
や勃起不全(ED)を招くことがあるほか、男性の精子数を減少させたり、精子の運動率を低下
させたりして、不妊につながる場合もあります。 

そもそも妊娠という現象は、非常に奇跡的な出来事です。通常、女性の膣内に射精された精
液の中には億単位もの精子が含まれていますが、膣内は強力な酸性で保たれているため、酸
性に弱い精子は大部分が死滅してしまいます。そんな厳しい環境を生き抜き、受精場所まで
辿り着けるのは、わずか100万分の1の精子だけ…。さらにはそこから、激しい生存競争を勝ち
抜き、卵子を覆う固い膜を突き破って卵子の中に入り込めるのは、機能的にも形態的にも優
れた、たった1匹の精子だけです。したがって、ストレスのような不調によって、ほんの少し精子
数が少ない・精子の元気がないことが、不妊の原因になっていることも考えられます。 

不妊治療の成績に影響することも
また、生殖医学専門誌「Fertility and Sterility」には、男性のストレスが不妊治療の成績に少な
からず関係しているという研究データも掲載されています。男性のストレスがより大きいご夫婦
はそうでないご夫婦に比べて、妊娠に要する期間が長かったそうです。ストレスは目には見え
ず、形もない、非常に感覚的なものですが、蓄積することによって、体が本来もっている生殖能
力に何らかの影響を与える可能性があると言えるでしょう。 

多くの専門家は、男性不妊だけではなく、すべての不妊症の原因にストレスが関与していると
指摘しています。ストレス社会と言われる今、ストレスを無くすことはできませんが、上手にかわ
したり、発散させることが不妊の解消につながるかもしれません。 

精子の健康と下着の関係
精子の健康を守るためにはブリーフよりトランクスがよいと言われます。しかし、これは予測の
範囲であり、明確に裏付けされた情報ではありません。ただ、精子や精巣の性質を考えると、
利にかなっていると言えます。 

精子は熱に弱い
精子は非常に熱に弱く、高熱によって死滅してしまうと言われます。また、精巣が精子をつくり
だすには、体温より数度低い状態がよいと言われます。このような理由から、精巣や精巣上体
などがおさめられている陰嚢には、熱を調節するための素晴らしい仕組みがあり、しばしばラ
ジエーター(放熱器)に例えられます。
陰嚢の表面には細かいシワがあり、暑い時には伸びて精巣を体から遠ざけ、寒い時には縮ん
で精巣を体に近付けています。この伸び縮みによって、精巣に体温が伝わりにくくしたり、逆に
伝えやすくしたりして、精子をつくりだすために最適な環境を守っているのです。
また、シワだけではなく、たくさんの汗腺もあって、陰嚢内に熱がこもらないよう、随時調節して
います。陰嚢が体の外にぶら下がるような形でついているのも、精巣や精子を“体温”という熱
から守るためだと言われます。
こういった精子や精巣の性質、陰嚢のしくみを考えると、元気な精子をたくさんつくるために
は、熱がこもりがちなブリーフより通気性のあるトランクスの方が良いのかもしれません。 

昔の男性の精子数は今の2倍
現代の男性の精子数は、明治時代に比べると約半分にまで減少しているという説があります。
また、WHO(世界保健機関)の発表によれば、精子の運動率は20年前に比べ約30%も低下し
ています。そこで、現代の男性と昔の男性との違いを考えると、ひとつに下着の違いが挙げら
れます。昔の男性の下着はふんどしで、今より通気性が良く、熱に弱い精子や精巣にとっては
最適な環境でした。
もちろん、精子の状態の変化には、栄養バランスの乱れをはじめ、食品添加物・環境ホルモ
ン・ストレス・生活環境の汚染などが第一に関係していると思われます。しかし、精子・精巣の
性質やここ数十年の精子数の減少を考えると、下着の変化が何らかの影響を与えている可能
性も否定できません。気になる方は実践されてみてはいかがでしょうか。 

自覚できる男性不妊と自覚できない男性不妊
男性不妊の中でも、器質的な問題が原因になっている場合は、精巣が小さい・陰嚢が腫れて
いる・精液量が少ないなどの自覚症状があらわれることがあります。また、勃起不全(ED)や射
精障害で性交がうまくできないという場合であれば、自分でも判断することができます。
しかし、男性不妊の大半を占める「精子の数が少ない・運動率が悪い・奇形精子が多い」という
症状においては、ほとんどの場合、自覚症状はありません。性欲や射精回数の多さ、男らしさ
とも関係はなく、日常生活においての支障をきたすようなこともありません。そのため、精子の
トラブルの有無を判断するためには、病院で検査を受ける必要があると言えます。 

検査や病院を通してわかった不妊の原因
不妊の原因が男性側にあることは決してめずらしいことではありません。主婦の友社「あした
ばくらぶ」会員アンケートでは、検査や治療を通してわかった不妊の原因の第3位が男性不妊
という結果が出ています。
男性不妊の多くは自覚症状が乏しいこと、そして、病院に行くまでご自身もパートナーも気付い
ていないケースがとても多いことが分かります。 

主婦の友社「あしたばくらぶ」会員アンケート
1位 排卵障害 
2位 機能性不妊(原因不明の不妊) 
3位 男性不妊 
4位 その他 
5位 卵管障害 

男性不妊の治療に使われる主な漢方薬
男性不妊の大半を占める、精子数が少ない・精子の運動率が悪いといった「造精機能障害」
に対しては、現在のところ、特効的な治療薬がないといわれます。そこで、精子数や精子運動
率がやや低下している場合であれば、漢方薬のような体に負担が少ない薬を使って改善を試
みる場合もあります。
一般に、男性不妊の治療では下記の漢方薬が処方されることが多いようです。 

補中益黄湯 
胃腸の働きを高め、体力や気力を補うとされる漢方薬。精子の運動能力を高める働きが期待
されている。 
八味地黄丸 
衰えを解消し、排尿機能を調節するとされる漢方薬。精子無力症に対しての効果が期待され
ている。 
六味地黄丸 
衰えを解消し、排尿機能を調節するとされる漢方薬。下半身の不調や滋養強壮などの効果が
期待されている。 
漢方治療のメリット・デメリット
上記以外にも、原因に応じて様々な漢方薬が処方されますが、どの漢方薬も基本的には体全
体の調子をよくすることによって造精機能の改善を試みるものです。比較的、効果がおだやか
なため、体への負担が少ないというメリットがあります。しかし、その反面、西洋薬のように鋭い
効果を期待できるものではなく、効果は明確ではありません。
また、即効性があるものではありませんので、長期間じっくりと取り組む必要があります。 

「造精機能障害」に対する特効的な治療薬がない今、「少しでも元気な精子を増やしたい」と漢
方治療に取り組んでいる方、これから取り組んでみようと思っている方はとても多いことと思い
ます。漢方薬を利用する際には上記のようなメリット・デメリットを十分に理解し、ご自分のペー
スであせらずじっくり取り組むことをお勧めします。 

男性不妊対策として利用されているサプリメント
栄養面の強化から自然に男性不妊を解消したいと、サプリメントを試している方も多いと聞き
ます。しかし、現在のところ、男性不妊対策のサプリメントとして販売されているもののほとんど
は「精力増強」を目的としたものです。認知度の高いサプリメントとしては「マカ」や「トンカットア
リ」が挙げられます。 

マカ
マカとは 
ペルーの高原にて栽培されているアブラナ科の植物。ハツカダイコンに良く似た形をしている。
主に天日乾燥させたものを粉末などにして使用されている。 
価格帯 
150円 ? 15,000円ぐらい(粒数やマカの含有量などによって異なる) 
特徴 
“男性の活力応援”のほか、女性特有の不調・高齢者の健康維持など、広い意味での健康食
品として老若男女を問わず利用されている。 
トンカットアリ
トンカットアリとは 
マレーシアやインドシナなどの熱帯雨林に育つニガキ科の低木。主に根の部分を粉末などにし
て使用されている。 
価格帯 
500円 ? 15,000円ぐらい(粒数やトンカットアリの含有量などによって異なる) 
特徴 
“男性の活力応援”の目的で利用されるケースが多い。 
男性不妊と高熱高熱によって男性不妊はもたらされるの?
「高熱と男性不妊は本当に関係あるのですか?」という質問を耳にしたり、インターネットの掲
示板などで目にすることがよくあります。実際、当サイトにも多数そういった質問はおくられてき
ます。 

精子を形成している精巣(睾丸)は、その温度が摂氏1℃だけ上昇しても、正常に機能しなくな
ることがあると言われるほど、熱に弱い器官として知られています。一般に、精巣がその機能
を維持するためには、体温より2?3℃低い温度環境が最適であり、精巣を包んでいる陰嚢が体
の外側にぶら下がるようについているのも、“精巣を体から遠ざけて涼しい環境を保つ”という
重要な意味があります。したがって、高熱が続いた場合に、造精機能に影響が及んで、精子
の数が少なくなったり、運動率が悪化したりして、不妊につながってしまうこともありますが、実
際の頻度としてはそれほど多いものではありません。風邪などによる一時的な発熱であれば、
ほとんど影響はないと言われています。ただ、高熱を伴うさまざまな病気の中でも「おたふく風
邪」は、場合によっては、造精機能の障害を招くことがあるので注意が必要です。

病名とは裏腹にこわいおたふく風邪
思春期以降におたふく風邪にかかると、睾丸炎(精巣炎)を引き起こすことがあります。睾丸炎
にかかると、睾丸が大きく腫れて激しく痛み出し、発熱・発赤・悪心・下腹部痛などの症状があ
らわれます。そのうち、ごく少ない確率ではありますが両方の睾丸の萎縮が起こり、造精機能
の低下を招きます。
ただ、おたふく風邪に伴う睾丸炎は、高熱ではなく、おたふく風邪のウイルス(ムンプスウイル
ス)が精巣内に侵入することにより発症するという説もあり、現在のところ、その原因は明確に
されていません。
高熱やおたふく風邪にかかったからといって、必ずしも不妊に結びつくわけではありませんが
正しい判断をするには病院での医師の検査をおすすめします。


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